モニターアームはいらない人の条件|机の奥行きと高さ調整で決まる
「いらない」と言っている人が、実際に何に不満だったのか
「モニターアームはいらない」という感想は、アームが役に立たないという話とは限らない。
机の条件と使い方が噛み合わなかった結果が、そのまま製品への評価として語られていることが多い。
声の中身を分けると、机の奥行き、天板、そして可動域の三つに行き着く。
奥行きが足りない机では、アームを付けても画面は下がらない
アームの利点として挙げられるのは、画面を奥へ押し込んで視距離を稼げることだ。
ところが奥行き60cmの机では、キーボードとマウスを置いた残りは40cm前後しかない。
24インチを正面に据えると、目から画面までが50cmを切る。
この距離では画面の上端と下端を見るのに首が動くので、高さを合わせても目線の負担は減りにくい。
不満の出どころは、アームではなく机の奥行きのほうにある。
天板に跡が残る・垂れてくるという声の正体
クランプは天板を上下から挟み、ねじで締め上げて固定する。
モニター本体とアームを合わせた重さが、数センチ四方の接地面に集中する構造になる。
やわらかい化粧板や中が空洞の板だと、その一点に跡が残る。
使っているうちにアームが少しずつ垂れてくるのも、ガス圧の劣化より先に、締め付けの緩みか天板側の沈み込みを疑うほうが早い。
動かせるようにしたのに、結局ほとんど動かさなかった
可動域は商品ページでいちばん目立つ部分だが、実際の使い方では、位置は1週間ほどで固まる。
そこから先に動かすのは、掃除のときと配置を変えるときくらいになる。
「動かすために買ったのに動かさない」という感想は、ここから出てくる。
逆に言えば、動かさない前提なら、目線の高さを合わせる手段はアーム以外にもあるということになる。
自分の机で判定する|奥行き・天板・モニターの3つを測る
メジャーを1本出して、3箇所だけ測る。数分で済むし、この3つがそろって「不要」に倒れるなら、買わずに解決する可能性が高い。
奥行き70cm未満か、70cm以上か(視距離が変わる分岐点)
24インチなら50〜60cm、27インチなら60〜80cmほど目から離すと画面全体が視野に収まりやすい、というのが一般的な目安である。ここで奥行きが効いてくる。奥行き60cmの机では、手前にキーボードを置いた時点で視距離は50cm前後に固定される。アームで画面を奥へ逃がせる距離は、付属スタンドの脚がなくなる分の10cm前後にとどまる。つまり奥行きが足りない机では、アームを足しても視距離の不足は埋まりきらない。70cm以上あるなら、アームの可動域がそのまま選択肢の広さになる。
天板の厚みと材質(クランプが噛めるか、たわまないか)
測るのは厚みと、天板の奥側にクランプを噛ませる平らな面がどれだけあるかの2点。市販のクランプは厚み10〜40mm程度に対応するものが多く、この範囲を外れると固定具の追加が要る。厚みが合っていても、中空構造の安価な天板やガラス天板、奥に補強桟や引き出しレールが走っている机は、締めても沈む・そもそも挟めないという結果になりやすい。ここで引っかかった人は、アームの検討よりも固定方法の検討が先になる。
付属スタンドの高さ調整幅とVESA穴の有無
モニターの背面に75mm角か100mm角のネジ穴が4つ空いているか。ここが無ければ、変換アダプタを挟むか、アームの話は成立しない。もう一つ、付属スタンドが上下に何cm動くかも見ておきたい。高さ調整が100mm前後あるモデルなら、座高に合わせた目線調整はスタンド側で足りることが多い。チルト(角度)だけで高さが固定のスタンドだと、数cm足りないまま数年使うことになる。
3つの計測結果がそろったところで、見送っていい条件を具体的に並べていく。
この条件に当てはまるならアームは見送っていい
測った3つの数字が出揃うと、判定はほとんど機械的に決まる。ひとつでも当てはまれば、いまは買わなくていい。
高さ調整付きスタンドで目線が合っている人
画面の上端が、座ったときの目の高さと同じかわずかに下。ここに収まっているなら、アームが動かす余地はもう残っていない。昇降機構の付いたスタンドは1台で10cm前後の調整幅を持つものが多く、一般的な高さ70cmの机ならこれで足りてしまう。届いているものを、買い足してもう一度届かせる意味は薄い。
モニター1台を正面に固定したまま使う人
アームの元は、動かした回数で取る。位置を決めたら数ヶ月そのまま、という使い方だと、支払った分が返ってくる場面がほとんど来ない。同じ高さに画面を上げるだけなら、モニター台でも結果は変わらない。差が出るのは掃除のときと、机の模様替えをしたときくらいだろう。
天板が薄い・ガラス・引き出し付きで固定点が取れない人
クランプは天板を上下から挟んで支える構造なので、挟む面が弱いと、固定できても支点側がたわんで画面がわずかに沈む。ガラス天板は割れの懸念があり、メーカー側も対象外としている場合が多い。天板の裏に引き出しや補強フレームが走っていると、そもそも下側の金具が入らない。
グロメット式やポール式という抜け道はある。ただしこちらは天板に穴を開けるか、床から支柱を立てる話になる。机の条件を変えてまで通す価値があるかは、次のセクションの使い方に当てはまってから考えれば間に合う。
逆に、アームでしか解決しない使い方
前の節の条件に当てはまらなかった人は、机が悪いのではなく、画面を固定したまま使えない使い方をしている。次の3つは、スタンドの調整幅をどう詰めても届かない。
デュアル・トリプルで画面の角度を内側に振りたい
付属スタンドの多くは上下の角度こそ変えられても、左右の首振りはほとんど動かない。2台を天板に平置きすると、外側の画面を斜めから見る姿勢になり、視野角の弱いパネルだと色と文字の締まりが落ちる。内側に振って正面から見る状態を作れるのがアーム側の役割で、3台になると各画面の間隔を詰める意味でも台座が邪魔になる。
つまずくのは重さの側で、1本のポールに2台を載せる形だとクランプの1点に2台分の荷重がかかる。天板の厚みと耐荷重は、台数が増えるほど先に確認しておきたい。
縦置き(ピボット)でコードや長文を読む
付属スタンドで90度回せるモニターは少なく、回転はVESA穴を使う側に寄っている。縦にすると画面の対角が縦方向に伸びるため、回した瞬間に下端が天板を叩くことがある。回してから高さを上げ直す余裕を残しておくと、この手戻りを避けられる。映像ケーブルが真下に引っ張られて抜ける方向に力がかかる点も、縦置き特有の癖である。
キーボードを画面の下に潜り込ませて奥行きを稼ぎたい
スタンドの台座は、奥行きで20cm前後を占める。この面積がなくなると、画面を天板の奥端ぎりぎりまで、機種によってはさらに後ろへ下げられる。奥行き70cm未満の机で視距離を50cm台まで伸ばしたい場合、机を替えずに効くのはこの一手だけになる。キーボードを画面の真下へ差し込む使い方も、台座が消えてはじめて成立する。
ただし、これはクランプが噛める天板があっての話で、固定点が取れない机では別の手段を考えることになる。
買わずに済ませる場合の代替と、かかる金額の差
見送ると決めた人も、画面が今の位置のままでいいわけではない。
モニター台・スタンド交換で足りる範囲と上限
モニター台にできるのは、画面を上げることだけである。
目線より画面が低くて顎が下がっている人には効く。逆に、画面が高すぎて首が反っている人が台を足すと、症状は重くなる。
そして台を置いても、画面と目の距離は1ミリも変わらない。奥行きが足りず画面が近すぎるという不満は、台では動かない。
付属スタンドにVESA穴があるなら、高さ調整幅の広い別売スタンドに替える手もある。クランプを使わないので、薄い天板やガラス天板でも成立する。ただし土台の設置面積は台より大きく、奥行き60cm台の机ではキーボードの置き場を削ることになる。
机を買い替えたほうが早いケースの分かれ目
分かれ目は机の奥行きそのものではなく、机の後ろに残っている空間である。
壁にぴったり寄せた奥行き60cm未満の机で27インチ以上を使っている場合、アームを付けても画面を後ろへ逃がす先がない。上下と角度は変えられても、視距離は縮んだままになる。この条件なら、奥行き70cmの机に替えるほうが不満の中心を直接片づける。
机の後ろに10cmでも余っているなら、机はそのままでいい。
アームを含めた3案を、初期費用と使える年数で並べる
| 案 | 初期費用の目安 | 使える年数の目安 | 年あたり | これで足りる人 |
|---|---|---|---|---|
| モニター台を足す | 1,000〜3,000円 | 5年以上 | 〜600円 | 画面が低くて顎が下がっている人 |
| 高さ調整幅の広いスタンドに交換 | 3,000〜8,000円 | 5〜10年 | 400〜1,600円 | 天板が薄くクランプが使えない人 |
| 奥行き70cm以上の机に買い替え | 15,000〜40,000円 | 10年前後 | 1,500〜4,000円 | 壁に寄せた浅い机で大画面を使っている人 |
| モニターアーム | 8,000〜20,000円 | 8〜10年 | 800〜2,000円 | 下げたい、または頻繁に動かしたい人 |
※金額は一般的な製品の価格帯からの概算で、特定商品の価格ではありません。年あたりは初期費用を使える年数で割った単純計算です。
年あたりで並べると机の買い替えが一番高くつくが、机は画面以外の作業面も同時に広がる。一方でアームには、動く部分が消耗するという別の事情がある。ガススプリング式は保持力が落ちて画面が少しずつ垂れることがあり、その時期は使い方と画面の重さで前後する。
付けると何が順に効いてくるか|取り付け当日から数ヶ月のあいだに
アームを付けて「よくなった」と感じる場面は、取り付けた瞬間ではなく、そのあと少しずつやってきます。逆に言えば、面倒なところは当日にまとまって来ます。
取り付け当日:位置決めとケーブルの取り回しで一度手が止まる
画面が宙に浮くと、ケーブルは机の高い位置から下ろす形になります。今までスタンドの足元を這わせていた電源とHDMIが、そのままでは足りなくなることがあります。取り付け自体は十数分で終わっても、ケーブルを買い足しに行く時間まで含めると、当日はそれで終わると考えておいたほうが気が楽です。クランプの位置も、後ろに振ったときアームが壁に当たらないか、先に手で動かして確かめておきます。
最初の1週間:目線の高さが固まるまで微調整が続く
自由に上げられるぶん、最初はたいてい上げすぎます。画面の上端が目線とほぼ同じ高さに収まるところまで、数日かけて少しずつ下ろしていくことになります。この高さは椅子の座面で決まるので、椅子を買い替えたらもう一度やり直しです。
数ヶ月後:掃除とレイアウト変更のたびに差が出てくる
効いてくるのはここからです。天板に支柱がないので、拭くときに画面を持ち上げる動作が消えます。机の向きを変える、もう1台足す、といった変更のたびに、アームだけ緩めて振れば済みます。ガス圧式はばねがへたる消耗品ですが、そのぶんメーカー保証を5年や10年と長めに設定している製品が多く、机まわりの中では入れ替えの回数が少ない部類です。
買うと決めた人へ|デスクの状況別に選ぶ
価格帯から入ると、だいたい選び直しになる。先に測った奥行き、天板、モニターの3つを、そのまま条件として当てはめていく。
天板が薄い・奥行きが浅い机向けの省スペースモデル(〜8,000円)
奥行き60cm台で、クランプの噛みしろがぎりぎりしか取れない机。支柱が短く旋回半径の小さいものを選ぶ。可動域を捨てている帯なので、「置き場所を1箇所決めて、そこから動かさない」と割り切れる人向けになる。
モニターアーム シングル モニタースタンド 13-32インチ対応 パソコンモニターアーム PCモニターアーム 液晶ディスプレイアーム ガススプリング式 VESA対応 75/100mm 耐荷重2~9kg クランプ&グロメット式 多角度調節
参考価格 3,480円 / レビュー3件 ★4.33
24〜27インチ1台を正面固定で使う人向けのベーシックモデル(〜10,000円)
迷ったらここで足りる。1日に何度も動かすわけではないなら、機構の凝り方より、VESA規格が合っているかと耐荷重の余裕のほうが効く。
モニターアーム NB ERGONOMIC 超コスパ シングル 24インチ 27インチ 32インチ 耐荷重9kg クランプ式 グロメット式 対応 取付簡単 回転 パソコンモニターアーム pcモニターアーム モニターアームスタンド パソコン モニター スタンド アーム デスクワーク リモートワーク
参考価格 3,280円 / レビュー50件 ★4.68
デュアルで角度を振りたい人向けの2画面対応モデル(10,000〜20,000円)
1本の支柱で2台を支える型は、左右の高さを別々に決められるかを先に見る。将来3台目を足す気があるなら、1台用を2本並べたほうが後で融通が利く。
LOE(ロエ) モニターアーム デュアル ディスプレイスタンド アーム モニタースタンド ガススプリング式 PCモニター VESA 2画面 LOZ2 ( シルバーx白 / グレー )
参考価格 15,900円 / レビュー14件 ★4.64
32インチ以上・重量級モニター向けの高耐荷重モデル(15,000〜30,000円)
耐荷重は上限ぎりぎりで合わせない。上限8kgに7.5kgを載せる選び方をすると、しばらく経って画面が少しずつ下を向く、という不満につながりやすい。2kgほど余らせる。
縦置きと頻繁な可動を両立したい人向けのガス圧式(10,000〜25,000円)
日に何度も高さを変え、縦横も切り替える人向け。ガススプリングは消耗する部分なので、張力調整のネジが外から回せるかを確認しておくと、数年後に買い替えずに済む。
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クランプが使えない机向けのグロメット・ポール式(8,000〜20,000円)
天板がガラス、奥に引き出し、壁付けで背面に手が入らない。このどれかに当てはまるなら最初からこちらを見る。グロメット式は天板に穴を開けるため原状回復できないので、賃貸なら床置きの自立ポール型を選ぶ。
まとめ|要る・要らないは好みではなく机の条件で決まる
モニターアームが要るかどうかは、好みや作業スタイルの問題として語られがちだが、実際に分かれ目を作っているのは机のほうだ。
奥行きが70cmを切る机では、画面を後ろへ逃がす余地がないまま前後の可動域だけが増える。付属スタンドで目線が合っていて、画面を正面に固定したまま一日を終える使い方なら、アームを足しても変わるのはケーブルの取り回しくらいで済む。天板が薄い、ガラス、手前に引き出しがある。この三つのどれかに当てはまる机は、そもそもクランプが噛む場所を探すところから難航する。見送ってよい条件は、この範囲に収まる。
逆に、2枚以上の画面を内側へ振りたい、縦置きで長い文書を読みたい、キーボードを画面の下へ潜り込ませて奥行きを稼ぎたい。この三つは、スタンドの高さ調整やモニター台では代わりが利かない。ここに該当するなら、モニター台で粘るより最初からアームに回したほうが、結局は安く着く。
判断が変わるとしたら、机を買い替える予定があるときだ。奥行き70cm以上の天板に移ったあとで、同じアームがそのまま使える。5年10年と持ち越せる部類の道具なので、机とアームのどちらを先に替えるかで迷っているなら、机が先である。アームは机に合わせて選ぶものであって、逆ではない。
自分の机の奥行きと天板の厚みを測って、上のどちらの側に落ちるか。それが決まれば、あとは価格帯の中から予算に合うものを選ぶだけになる。


